理事長所信



理事長 大槻 英人

【はじめに】

空気はなぜ透明なのか?なぜ目に見えないのか?

科学的な説明では、「空気を構成する気体の分子が特定の波長の光を反射や拡散しないから」となる。一方、「空気が透明なのではなく、空気が透明に見えるように我々の目が進化したから」という答えもある。少し視点を変えると全く違う景色が見えてくる。

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、全世界に危機的な状況をもたらした。その一方、遅遅として進まなかったIT化やテレワークの普及、新しい行動様式が受け入れられ始めている。視点を変えて物事を見るためには柔軟性が必要である。そして、その結果を受け入れるにも柔軟性が必要だろう。

100年を越す老舗は、伝統を守るだけでなく、時代に合わせた柔軟性があったからこそ長く続き老舗になれたと聞く。弛まない地域への貢献の連続こそが、「明るい豊かな社会」への実現につながると信じ、我々も柔軟性をもって持続可能な組織を目指していく。 

【新しい教育】

2020年、小学校ではプログラミング教育が必修化された。そして2021年からはGIGAスクール構想が現実となり小学生一人ひとりにコンピューターが配備された。学習でのコンピューター使用率は、先進国の中で最低に近い日本だが、プログラミング教育の必修化と合わせて、教育が変わっていくことに期待している。

さて、プログラミングとはなんだろうか?黒い画面に難しい文字を打つことだろうか?台湾のオードリー・タンは次のように述べている。

「プログラミングは単に言語ではなく思考方法で、コンピューテーショナルシンキングやデザインシンキングを身につけていくことです。プログラミング教育とは、プログラミング言語を覚えることではないのです。」

プログラミングは思考方法であるという。答えのない問題に自分なりの答えを出していく。問題を見つけて、その解決策を思考する。これらは先の見えない時代だからこそ必要な素養だと考える。

教育こそが最大の投資であり、街の未来を決定づける大事な分野であることは間違いない。

教育も進化している。進化した新しい教育を私たち自身が学び、次世代にどう生かしていくのかを考えていかなければならない。その学びを地域へ還元し、未来への確かな基礎としたい。 

【デザインの力】

 「私たちはアートを通して問いかけ、デザインを通して解決策を模索する。」この言葉はAirbnbの共同創設者ジョー・ゲビアのものだ。よくアートとデザインの違いは?という問いがあるが、アートは問題提起をし、デザインは問題解決をすると言われる。デザインについて、公益財団法人日本デザイン振興会は次のように定義している。

「常にヒト(ユーザー)を中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を実行し実現化する。この一連のプロセスがデザインと言えます。」

冒頭のジョー・ゲビアの言葉と同じく、デザインは目的を達成するための解決策やプロセスであるという。デザインとは普段、色や形のことを指して使われることが多い。しかし、それは目的を実現するための手段の一つに過ぎない。忘れてはならないのは、常にヒト(ユーザー)を中心に考えることだ。デザインは問題解決をする一連のプロセスを指し、どのようにすれば目的を達成するか、そのためには相手にエラーなくどう伝えなくてはいけないかを考えていくものだ。

事業には解決したい事柄や達成したい目的があるはずだ。その目的のための計画そのものがデザインになるということだ。日々、我々が斜里青年会議所で行っている事業計画がデザインとも言えるのではないか。であるならば、デザインについて学ぶことは必修科目ではないか。あらゆるものにデザインの力を発揮できる、そんな力を身につけていきたい。そしてその力を、仕事や事業構築はもちろんのこと、日々の生活にも活用し、組織と個人それぞれの目的実現の道具としたい。 

【私たちの住む場所】

 私たちが住む場所には自然が溢れ、その自然から恩恵を授かっている。特に世界自然遺産である知床は、狭い範囲に多様な動物が暮らす世界的にも珍しい場所となっている。

 私がそうだったように、住んでいる間は知床という存在が当たり前すぎて目に入らず気にもとめない。しかし、一度住む場所を変え戻ってくると、この知床の雄大さに気付かされる。目の前にありながら目に入らない。これは悲しすぎるのではないか。住みながらにしてこの素晴らしさに気づくことができないのだろうか。そして、この場所に愛着を持ち、地域から出て行ってしまったとしても、再び戻って来られる場所として、安心して戻るという選択ができる場所として記憶に残すことはできないだろうか。

 故郷に戻るということは、郷土への愛なのか、それとも別の理由なのか。理由は様々だろうが、郷土への愛があったからこそ故郷へ戻るという選択をする人が増えることを目指したい。それは将来、我々の運動・活動を支える力になるだろう。今から種をまき、地域を包み込む郷土への愛を育んでいきたい。 

【能動的な組織】

 中長期ビジョンで策定した持続可能な組織に向け、誰もが担うことができる効率的な組織運営の体制作りをする。どんなことがあっても、その時できることをやるという意思、その意思の支えとなる柔軟に組織運営ができる情報基盤整備を進めていく。できること、使える時間がそれぞれ違うメンバーをまとめ、能動的に動くことができる組織を目指す。

 我々の運動・活動は多くの人たちに支えられているからこそ、全力で取り組むことができている。その点を再度認識するとともに、その支えていただいている方々と、より良い関係性を持つことが、安定した運動・活動の基盤となることを忘れずに関係を構築していく。

 現在いるメンバーの多くは2024年に卒業してしまう。斜里青年会議所の2024年問題として危機感を共有していきたい。会員拡大を行うためには、まず我々の運動・活動を知ってもらう必要がある。知ってもらうための情報発信は、会員拡大に限らず重要な点であると認識し、積極的な広報活動をおこなっていく。

 会員拡大によって入会した新しいメンバーはLOMの宝である。そのLOMの宝の力を遺憾なく発揮してもらえるよう、教育の機会を設け、組織全体でサポートしていく。 

【地域とのつながり】

 しれとこ斜里ねぷたをはじめてとする地域のお祭りが、新型コロナウイルス感染症によって中止を余儀なくされた。実施できるか先は見えないが、ワクチンの普及により地域のお祭りが開催され、お祭りによる賑わいやつながりが復活することを願っている。そしてその時には、地域の一員として参加し、地域の活力の一助となる。

 斜里青年会議所より始まった知床しゃり花火大会は、2021年度より多くの団体が集まり実行委員会として新たなスタートを切った。このように地域で活躍する他団体との交流も継続的に行い、途切れることなく次世代につなげる。 

【むすびに】

 スローガンの「Redesign」とは、「完成されたデザイン(最適解)」を、さらに「最適化」するということだ。大きく変容するこの時代だからこそ、今まで先輩諸氏が積み上げてきた最適解を、この時代に最適化する必要があるのではないかと考え、このスローガンとした。ビジネスでよく使われる「Disrupt:ディスラプト(破壊)」ではなく、今までの文脈を継承し、地域と共存していく思いのもと、「Redesign:リデザイン(最適化)」を掲げ、先が見えないこの時代に柔軟に対応していく。

 物事を理論的に捉える力を養い、地域の課題を見出しヒトを中心に考え解決していく。そして郷土を愛する心を育む。それらが実現した地域では希望と笑顔が溢れると信じている。

 我々は、希望をもたらす変革の起点として率先して行動し、地域に対してより良い変化を生み出す存在となることを目指す。